ドクターマーチン チェルシーブーツ(サイドゴアブーツ)
チェルシーブーツ
マーチンのチェルシーブーツ
これは20年ほど前に仕事でご一緒したカメラマンの方が履いていたのを見て
格好良さを感じたのが始まりだ
その人は仕事、プライベートと常にそのチェルシーブーツを履いていて
ガッツリと履き込まれ、ワークウェア然とした雰囲気が何とも
無骨で美しかった
ドイツ軍の従軍医師であったクラウス・マルテンがマーチンソールを開発している
1945年、休暇中のスキーで負傷した足の治療中、痛みを和らげる靴を作れないかと考えた
軍支給のブーツでは、歩行時にどうしても痛みが走ってしまうからだったそうだ
そして友人のフンクとともに、古タイヤを加工して空気を封入したエアークッションソールを開発する
その後ソールのイギリスでの製造権を獲得した作業用と軍用の靴メーカーR.グリックス社は
1960年、ドクターマーチンソールを施した最初のワークブーツを完成させ
「1460」のコードをつけて販売した
当初は郵便配達人や警察官、工場労働者などに向けた実用本位の作業靴だったのだが
1960年代後半、モッズから発展したワーキングクラス層の若者集団スキンヘッズが、
反体制・アンチファッションの一つの表現として用いるようになっていく
スキンヘッズは、労働者階級というアイデンティティを誇示するため
モッズスタイルをベースにワークアイテムをミックスし、スタイルを形成していった集団だ
本来は牧場労働者が使うランチコートや、炭鉱や港湾労働者の服であるドンキージャケット
土木作業者が使うサスペンダーなど、ワードローブの多くはワークウェアであった
最たる特徴である坊主頭もまた、肉体作業者の象徴なのだ
そんな彼らが最も愛したアイテムこそが、ドクターマーチンのワークブーツだった
スキンヘッズの前身であるハードモッズや初期スキンヘッズには、黒革のものやロングタイプも履かれたが
やがてチェリーレッド(赤茶色)の8ホール(紐を通す穴が片側8つずつ)
最初期型の「1460」が最もクールだと認識されるようになる
スキンヘッズ流の履き方は、シューレースをクロスさせず横一文字で思い切りきつく締め
左右の外羽根がぴったりくっつくようにすることだった
Drマーチンというと8ホールが思い浮かべるが、サイドゴアブーツも欠かせない
サイドゴアブーツの歴史はもう少し古く1830年代中頃
ロンドンの靴職人が即位したばかりのヴィクトリア女王のために
脱ぎ履きしやすくフィット感の得やすい靴として作り、献上したものが始まり
当時、両サイドに伸縮性のあるゴムが施された靴は、非常に革命的だったという
このブーツに関心を抱いた、洒落者として知られる夫のアルバート公は
ブーツのデザインを紳士靴に落とし込み、現在のサイドゴアブーツのスタイルが完成した
こうした歴史のあるブーツが、1960年代前半、全盛期のモッズの間で人気となり
「CHELSEA BOOT チェルシーブーツ」と呼ばれるようになっていく
ロンドンのチェルシー地区に生息するモッズが履き始めたことからこの名になったのだが
モッズが履きはじめたきっかけは、ビートルズの影響だったと推測されている
Photo by Andy Wright/Getty Images
こうやって挙げていくと
Drマーチンがイギリスのサブカルチャーとともに歩んできた事がよくわかる
ファッションは雄弁だ